メディアデザイン演習

まず、ひろみさんの大学時代について聞いていきたいと思います!
大学って、結構「自由になったなー」って感じる人が多いと思うんですけど、
ひろみさんはどの様な感じでしたか?

私は幼稚園の先生になるために短大に通っていたのですが、「自由になった!」と感じたことはほぼなかったですね。むしろ囚われてしまったような感じさえしたかなあ。

大学生って、ドライブとか飲み会したりとか、そういった遊びをするイメージがあったんですけど、私のような短大だとそんな感じのことはほぼ出来ませんでしたね。毎日が課題の山だったので、行ってしまうともう、次の日への影響が恐ろしくて。(笑)

なるほど、本当に大変な学生生活を送っていらっしゃったんですね…。

でもやっぱり、幼稚園の先生になることは小さい頃からの夢だったので、それだけを目標に頑張れました!
もともと小さい子どもたちと遊ぶのも好きだったので、はやく資格を取って、幼稚園の先生になって、子どもたちを楽しませるんだって!

では、そんな多忙な学生生活を経ていよいよ幼稚園の先生になったということですが、はじめの頃はやはり学生の時以上に大変だったりしたのですか?

…そうですね。 20歳の時に資格を取得して、そこから幼稚園で働き始めたんですけれども、はじめは本当に過酷な毎日でした。本当に毎日気持ちがすり減るような思いで、生活を送っていましたね。

「命を預かっている」という責任感もあり、もう とにかく必死だった思い出しかありません。

そうなのですね…。では、幼稚園の先生をする中で、特に「大変だったな」と感じたことはなんですか?

うーん。大変だったのは、やっぱり今まで学んできたことと現実との「差」ですね。

短期大学時代に勉強して学んだことはあくまで本の中で学んだことなので、実際その立場に立ってみると、イメージと全然違うことが結構ありました。現場で見て学ぶことが多かったかなあ。

人の命、それもまだ小さい子どもの命を預かるお仕事ですし、
本当に大きな責任が伴うことと思います。

逆に、幼稚園の先生やっててよかったなと感じたエピソードなどはありますか?

たくさんありますが、1番嬉しかったのはやっぱり、子どもたちが「先生、先生!」と言って、いつもくっついてきてくれたことです。

もともと子供が大好きだったので、もうそれが本当にかわいくて…。子どもたちの笑顔を見ると、やっぱり幼稚園の先生になって良かったなと感じましたね。

自分の夢をかなえることってなかなかできないことだと思います。
子どものころからの自分の夢を実現したひろみさん、本当に素敵です!

では次に、その頃のひろみさんのご交際についてもお聞きしたいと思います。
現在のご主人と出会ったのもその時期時期なのですか?

そうですね。今の主人とは私が22歳の時に、短大時代の友達に呼ばれて食事をした場所で出会いました。

その時、私は付き合ってる人がいたんですけれども、少しその人との今後について悩んでいて…。
そんな時に私の友達が、「気分転換に食事しにおいでよ!」と誘ってくれたのがきっかけです。

なるほど。ではご主人には、その時付き合ってた人とは「違う魅力」を感じたということでしょうか?

うーん、違うというか…。今の主人は、普通にはなかなかいないタイプでした(笑)

今の主人は本当に性格も遊びも全てアクティブで、今まで経験したことがないようなアウトドアの遊びにたくさん連れて行ってくれました。普通はしないようなバイクの遊びとか、本当に初めての経験ばかりで、毎日が新鮮でした。

バイクの遊び!?ちょっと気になりますね、見てみたい(笑)

その頃のご主人とのお付き合いについては、ひろみさんのご両親には話されていたのですか?

主人とは6年半くらい付き合っていたのですが、父親とはもともとあまり話さなかったのと、母親の方もその頃ずっと具合が悪かったので、心配をかけないようにとあまり話さないようにしていました。

なるほど、6年半ですか。結構長くお付き合いなさったんですね。

そうですね。途中で結婚する話にもなったんですけど、まだ幼稚園の仕事を続けていたかったのと…、先程少しお話したように母親が結構重いうつ病にかかっていたので放っておけず、なかなか新しい環境に踏み出せずにいました。

そうだったのですね…。その時お母さんは結構大変な状態だったのですか?

はい、ひどい時は朝から夕方までずっと 寝ているような生活でした。
当時うつ病という病気は、世間的にも少し恥ずかしいような時代だったので、自分の母親のことをあまり周りに公表できずにいましたね。それも辛かったなあ…。

今の主人とも結婚はしたいとは思っていましたが、自分だけ幸せな生活になることに罪悪感を抱いてしまって。なかなか踏み出せずにいました。

色々な葛藤があったのだなと感じます。ではなぜそのような大変な状態から結婚に踏み切ることになったのですか?

結婚を決心したきっかけは、やっぱり「今の自分から変わろう。」と思ったことですね。

1度、結婚式の日取りを決めていた時があったのですが、その時期に母親の調子がすごく悪くなってしまって。
結局その時は結婚式を延期してしまったのですが、2度も3度も延期をするのは相手のご家族にも失礼だし、でも母親のこともおいていけないし。すごく自分の気持ちの中での葛藤がありました。

色々な気持ちが入り混じっていたのですね。

そうですね。ですがそんな時に、私の親戚のおばさんに、

「お母さんを大事に思う気持ちも大切だけども、自分の幸せのために生きること考えることも大切だよ」と言われまして。

そこで確かにそうかもしれないな、と思うようになりました。

母のことももちろん考えながら、この先の自分の幸せも見つけていくことこそが、一番大切なことなんじゃないかって。そこでようやくようやく結婚する決心がつきました。
今考えると、その決心こそが私の「今」を形成しているのだなと感じます。

たくさん悩んだうえでの結婚は、ひろみさんにとって、「人生を変える決心」だったのですね…。

結婚したことで、やはり生活や気持ちの面での変化はありましたか?

そうですね。まずは家から出て自由にはなったけれども、気持ち的な面では少しもやもやしていました。

自由にはなりましたが、その反面、やっぱり母親を家に残してきてしまった罪悪感っていうのは、ずっとありましたね。

急に切り替えるのも難しいですよね。

はい。あと実ははじめての子どもを授かったのですが、流産をしてしまって。
その時は本当に心も体もやられてしまいました。 子どもは欲しかったけれど、次の子どもを産む気力もなくなってしまって。

でも、そんなときに浮かんだのが母の顔だったんです。

自分は結婚して環境から全て変わったけれど、母はずっと変わらない生活でいました。だから、母の生活になにか「変化」をもたらせてあげたい、そう思って。

そのために今、私に出来ることは何だろう。そう考えた時に、「孫の顔を早く見せてあげること」だと思ったんです。
母は子どもが好きだったので、孫に会わせてあげたら、もしかしたら少し病気も良くなるんじゃないかなっていう希望もありまして。その時「次の子を産もう。」と強く決意しました。

お母さんのことを想う気持ちが、ひろみさんの意思を固めたということなのですね。
その時、お仕事の方はまだ続けられていたと思うのですが、そちらはどうなさったのですか?

正直、「幼稚園の先生をまだ続けたい。」という気持ちは自分の中で大きかったです。ですが、次の子どもに対しても今まで以上に真剣に向き合おうと考え、本当に迷ったのですが退職をしました。

小さい頃からの夢だった幼稚園の先生をやめるには、本当に強い心が必要でした…。でも、これから産まれてくる子どものために、潔くやめようと決意しました。

…ひろみさんのお子さんに対する強い「想い」、そして「愛情」を感じます。

それから、無事にお子さんは授かったのですか?

はい、しばらくしてから上の子が無事に生まれてきてくれました。

でも生まれる直前に、赤ちゃんが窒息のような状態になってしまっていて…結構緊迫した出産の時間でした。 なので、無事に産まれてきてくれた時はとにかくホッとして、よかったっていう気持ちが一番でした。出てきてくれて、本当にありがとうって。

無事に元気なお子さんが生まれて良かったです!
ひろみさんのお母さんやお父さんはどのような反応をされたのですか?

とにかく、もう本当に喜んでくれました。実家に連れて行った時は、やっぱり初めての孫だから、もう可愛くて可愛くてしょうがないようで。 取り合うように抱っこしたりしていた記憶がありますね(笑)

こんなに大事に私の子供を抱っこしてくれるんだっていうぐらいに、もう本当に幸せそうに。こんな嬉しそうな親の顔は見たことがなかったので、本当に子供を産んでよかった、結婚してよかったってしみじみと思いました。

あと、これでもしかしたら少し病気も回復していくかなっていう、ちょっとした望みもありました。本当に、本当にうれしい瞬間でした…。

ひろみさんのお気持ちも、お母さんの体調も、どちらも良い方向に向かっていかれたようで、本当に良かったです…!

これまで、20代の頃のひろみさんの色々なお話を聞かせていただきました。
それらを経て、ひろみさんにとっての「20代の転機」について教えてください。

私にとっての「転機」は、やっぱりあの時決意した「結婚」だったなと感じます。今の主人と出会ったこと、親戚のおばさんに言われた言葉。そのすべてが今の私をつくってくれているんだなって。

多分、あの時誰かの助言がなかったら、いつまでも踏み出せずに家でずっと看病するっていう選択肢を取っていたと思います。思い切って決意して結婚したことで、自分の気持ちを整理することができたし、生活も変わった。

子どもも生まれて、母や父の笑顔を見ることができた。

うんうん。

もしかしたら他の選択肢もあったかもしれないですが、今の私は、あの時結婚して本当に良かったなと感じています!


色々な気持ちの葛藤の末の結婚。ひろみさんにとっての結婚は、もはや「結婚」という一言だけでは言い表すことが出来ないくらいの、非常に大きな「転機」であったのではないかと感じます。
たくさんのお話をお聞きすることができて、本当に良かったです。本日は長くお時間をいただき、ありがとうございました!

こちらこそ、ありがとうございました!